[2004/12/16] ピーコックユニオンの考える Web アクセシビリティについて

JIS X 8341-3 が公開された当時のアーカイブです。スタンスは概ね変わっていないのであらためて公開。

2004年6月、WebアクセシビリティのJIS規格が公開され、ますます活発な意見が飛び交うアクセシビリティ界隈ですが、依然として行政・企業 の意識はボトムアップされたかと言えば残念ながらそうでもありません。概ねの人間は自分のパソコンの、いつも使っているブラウザーで見たものが、デザイ ン・レイアウトを含めてそのページの全てであると思いがちです。しかしドキュメントを世界相手に発信する以上、大袈裟な言い方ですが全世界のどんな人にも そのドキュメントを閲覧する権利があることを忘れがちです。それはアラビア人かもしれないし、視力を持たない人かもしれないし、両手を失った人かもしれないし、全身の筋肉を失った人かもしれないのです。あなたのホームページはそれらの人に等しく情報を届けることが出来ているでしょうか?

印刷媒体のデザインとWEBのデザインは、視覚伝達の要素を含む以上、平面構成的な視覚的効果は似ているかのように思われますが、根本的に違いま す。印刷媒体が視覚的な要素でのみで成り立つのに対し、WEBページは視覚的要素のみでは成り立ちません。これは、写真作品や映像作品の発表の場として公 開しているWEBサイトを否定するものではありません(これでは写真作家の立場がありません)。ただその写真作品を鑑賞することが出来ない人にも、このサイトが写真ギャラリーのサイトであり、いつどこで写した写真であり、またそれぞれに何が写っているのかを知らせなければなりません。少なくともそういった 配慮をするだけで、写真を見ることが出来ない人にも『このサイトは○○という横浜生まれの写真家のポートフォリオサイトで、作品は主に女性のポートレート である』というような情報を伝えることが出来るのです。美しい写真やグラフィックも、思わずクリックを誘うインタラクティブな挙動も、もちろん魅力的なサ イトの大切な要素ですが、ユーザーの誰もが、いかに欲する情報まで最短距離で辿り着くことができ、その内容を正しく読み取ることが出来るよう設計されてい るか否かが、それら以上に重要なことではないのでしょうか。

ピーコックユニオンでは配信するドキュメントの情報と、画面レイアウトの情報を切り分けることで、よりソリッドなドキュメントの配信が可能になるも のと考えています。ユーザーが欲する情報へ最短でアクセスすることが出来るサイトを制作するための手段です。これがWEBにおけるアクセシビリティの全て であるということではありませんが、テーブル段組でレイアウトされたページよりテキストの抽出が容易になります。まずはこのような意識を以ってサイトを設 計することが WWW というグローバルな文書公開機構においての正しい情報配信なのではないかと感じています。およそ筋ジストロフィーを患うアラビア人がピーコックユニオンの サイトを見に来るかと言えば99%無いと思いますが、配信に際してはこれらの権利を常に念頭に置き、責任を持って制作に当たっています。

もちろん様々な個体差に対して100%、同等の情報を供給することは不可能かと思います。ただその為の努力と出来る限りの配慮を惜しまず制作を行う ことが、制作者としてのミッションであると感じています。W3Cの勧告するWEB アクセシビリティガイドラインやJIS規格はそれら目標達成への道しるべ、あるいはそれら意識を持たない人のお尻を叩く鞭でしかなく、最も重要なことはそれぞれ個人が権利の眼を開くことだとピーコックユニオンは考えています。